「考えの材料」を描き続け、理屈と感覚の両方で楽しませるアーティスト
南 健吾

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感じること

モノトーンの背景のなかで、人が様々な姿で佇んでいる、だが彼等は一様に顔を持たない。南健吾さんの絵画や彫刻は、本人がいうように「観念的」だ。顔がなく、輪郭が歪んだ人物は確かに現実感が薄い。だが一方で、ありのままの人の動作やしぐさは、具体的で身近な現実がそこにあることを受け手に伝える。南さんは言う。「理屈と感覚の両方で楽しんで欲しい。特に感覚的に、なんか分からないけどなんか感るというように。」『感じとる』こと、それは一体何を意味しているのだろう?

考えの材料

南さんは徹底して人を描く。特定の個人ではなく、人間全体または人の考え方そのものを描いている。「映画監督で小津安二郎さんっていらっしゃるんですけど、その方が人間を描けば、社会を描けるとおっしゃっていたんです。」南さんは社会を『説明』するのではなく、ありのままの人を積み上げることで、広い社会をとらえたいという。南さんは自身の作品を『考えの材料』と呼ぶ。受け手が人や人の考え方そのものを感じとることで、身近な現実への考えの材料になってくれればと話してくれた。「こういう事柄はいいのか?わるいのか?どう思いますか?というのを提示できたらなと思っています。」

制作から発表へ

南さんは今、高校の先生として美術を教えながら、3号倉庫というアートレジデンスで4人の作家と肩を並べて作品制作に没頭している。「3号倉庫の作家達と美術の役割についてや、素材や技法についての話しをよくする。」作家同士で創造の過程を見せあえたり、考えを共有したりという楽しくも濃密な時間をともにしている。そんな南さんは、将来的にはギャラリーにとどまらず、広い場所で発表していきたいという。また映像やインスタレーションという発表の仕方も模索しているということである。

遠くへ

ところで、南さんは遠くに行くことが好きだ。福岡で生まれ育った南さんは、大学時代を山形で過ごし、今パリへの留学を計画中である。「外にでないと分からないことが多い。県単位ででてみたんで、今度は国単位ででてみたい。福岡のいいところが山形に住んでわかった。日本のいいところをパリで感じたい。」外に出ていくこと、それはこの社会を見つめなおす、もしかしたらパーソナルな象徴である顔を描かないこともそれに近いのかも知れない。南さんは人を描き続ける、そして今をポジティブにとらえ続けるだろう。

南 健吾

南 健吾

日本デザイン専門学校工業工芸デザイン科クラフトデザイン専攻卒。

2007年 東北芸術工科大学 洋画コース 卒業
2008年〜 共同アトリエ・3号倉庫にてレジデンス中

現在、アパレル関係、ポスター、雑誌の挿絵、年賀状デザイン、包装紙デザイン、切り絵…などのさまざまなジャンルの仕事を手がけており、充実した多忙な日々をおくっている。